大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「いい反応―」
「…なに、水嶋君」
ちゃかすみたいな言葉に、瞬時に振り返ったことを後悔したけれど、彼の表情がいつもより真剣だったから、思わずじっと見つめてしまった。
それから、階段の一番上にいる彼が、だらしなく座ったまま、枢木虹、ともう一度私を呼んだ。
屋上の扉の隙間からもれる光が、彼にあたっていてちょっとまぶしかった。
階段の下、苦しさに溺れかけている私に向かって、その海のそとで気まぐれに出口を知らせるようなそんな気配を感じたのは、ただの気のせいか。
水嶋君の唇が、ゆるやかな弧をつくることなくひらく。
「知らなさそーだから教えてあげるけど、世の中、もっと男いるからね。幼なじみだかお気にいりだかどっちでもいーけど朝比奈だけが、あんたの全部じゃないよ、絶対」