大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】





ああ、そうか。



これが、水嶋君のなかの“本物”か。

と、わかった次の瞬間にはもう、彼の表情はゆるくつかめないものに戻っていて、私は返事をすることもなく彼に背を向けた。





教室に戻ると、美優がにやにやした表情で、どうだったの?と聞いてきたけれど、私は曖昧に言葉を返すことしかできなかった。

そんな私に、「私は、あんたんとこのイケメンより断然水嶋君のほうがタイプだけどね。でも、水嶋君けっこう遊んでいるらしーから簡単には捕まらないでね」と美優はいたずらっぽく笑った。




美優が言うには、どうやら来るもの拒まず去るもの追わず、が水嶋君のスタンスらしい。

なんとなく性格の悪い彼らしい、と苦笑いしながら、どうせ誰にも執着しないんだろう、と思った。

あのゆるい表情をくずさないお付き合いしかしなさそう。
それでも、女の子のほうはどんどん彼にはまるだろう。
だから、去ったとき追われないことに女の子は絶望するんじゃないかな。


今日話しただけでも、なんとなくそんなイメージが浮かんでしまう。
たぶん彼は千尋とは違うタイプの残酷さをもつ男の子だ。




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