大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】










その夜、千歳君から、電話があった。


お風呂あがりに、携帯でゲームをしていたら突然着信の画面に切り替わった。

それから、千歳君と表示された名前を見た瞬間、眠りにむかっていた頭が一気に冴える。


付き合っていたころも別れた後も、千歳君とは電話なんてほとんどしたことがなかったから。ただ、電話番号だけは登録していたから、かかってくること自体は不思議なことではなく。



物事っていうのは、重なっていくらしい。




恐る恐る通話のボタンをタップして、耳に携帯を近づける。

そうしたら、数秒のノイズののち、もしもし、って低くて穏やかな声が聞こえた。



「…千歳くん?」

『うん、虹、そうだよ』



優しい口調。


夏祭りぶりなのに、なんだか懐かしくて、もう罪悪感も消えた今では、彼に甘えてしまいたくなる。

涙腺の奥をほどかれて、ちょっと泣きそうになりながら、どうしたの?と尋ねたら、千歳君のほうで衣擦れの音が聞こえた。

体勢を変えたのかもしれない、とぼんやり思う。


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