大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
◇
その夜、千歳君から、電話があった。
お風呂あがりに、携帯でゲームをしていたら突然着信の画面に切り替わった。
それから、千歳君と表示された名前を見た瞬間、眠りにむかっていた頭が一気に冴える。
付き合っていたころも別れた後も、千歳君とは電話なんてほとんどしたことがなかったから。ただ、電話番号だけは登録していたから、かかってくること自体は不思議なことではなく。
物事っていうのは、重なっていくらしい。
恐る恐る通話のボタンをタップして、耳に携帯を近づける。
そうしたら、数秒のノイズののち、もしもし、って低くて穏やかな声が聞こえた。
「…千歳くん?」
『うん、虹、そうだよ』
優しい口調。
夏祭りぶりなのに、なんだか懐かしくて、もう罪悪感も消えた今では、彼に甘えてしまいたくなる。
涙腺の奥をほどかれて、ちょっと泣きそうになりながら、どうしたの?と尋ねたら、千歳君のほうで衣擦れの音が聞こえた。
体勢を変えたのかもしれない、とぼんやり思う。