大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
そうやって悲劇の真ん中にいたら、虹、とまっすぐな声が鼓膜をゆらした。
私に手を差し伸べるような優しい声ではなかった。
なに、と毛布の中で私の声はこもって響く。情けない声だった。
『虹はさ、気持ちを伝える以外で、恋愛的な好意を千尋に示したことある?』
「……」
『幼なじみって立場じゃなくて、ひとりの女の子として、千尋に何かしたことある?』
「……ない、かも」
千歳君が、だろうね、と落とした言葉はちょっとだけ厳しくて、苦しさから逃れるみたいに毛布の真っ暗闇をぬけだす。
そうしたら、自分が思っていたより、夜の濃さは深くなくて、もしかしたら選択肢はほかにもあるのかもしれない、なんて気持ちになってくる。
『好きって言葉が相手に伝わらないなら、態度で示すのも手だよ』
「……、」
『自分から何もしてないくせに、うじうじしてるだけじゃん。虹って』