大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
振り切るように首を横に振って否定したけれど、黒い気持ちはおさまらず、どうして?ばかりが、朝から渦巻きはじめる。
今はまだ付き合ってないかもしれないけれど、このまま二人がさらに仲良くなって付き合うなんてことになったら、もう何もかも手遅れになってしまう気がする。
千歳くんが言っていた、好きを態度で示すような行動もぜんぶ、できなくなる。
「虹……」
「なに、美優」
美優が私の顔をのぞきこんで、複雑な表情で笑った。
「虹はいい女の子だからね」
「……百瀬さんにはかなわないよ、きっと」
「ううん、私はちょっと垂れ目で、童顔で、笑うと八重歯がでる虹ちゃんのほうが好きだよ」
「ええ、なにそれ。褒めてないじゃん」
「あはは、褒めてる褒めてる」
美優の言葉に、ほんの少しだけ元気を取り戻したふりをして、私は黒くて弱い感情を隠すように八重歯を見せて笑った。