大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
放課後の、17:00。
私と千尋、千尋に告白をしている女の子以外に下駄箱にいる人はいない。
学校で課題をやってから帰りたい私と、クラスで部活のある友達とだらだらしゃっべってる千尋の帰りは、他の人よりも遅くて、だから、いつもこの時間になってしまう。
一緒に帰ろう、そんな言葉は私たちの間には一言もなかったけれど、家がとても近いから、なんとなくずっと一緒に帰っている。
小学生のときから、ずっと。
行くのは中学にあがる時に、あまりにも千尋が朝が弱いせいでやめたけれど、帰るのは、一緒だった。
そのことについては、別に文句はない。
なんだかんだ、というか、けっこう千尋と歩くのは、今は楽しいから。
だけど、問題は、待ち合わせ場所だ。
「ねえ、いっこ聞いていい?」
甘ったるい千尋の声。
甘ったるそうな声をだすのは、千尋が相手をなめてるからだ。
でも、たいがいの女の子は気づかないから、胸を疼かせたりするんだとおもう。
「俺のどこが好きなの?」
「へっ?……え、えっと、あの……、優しくてかっこいいところ、かな」
まだ、告白の返事ももらっていないのに、千尋の好きなところをいう女の子の声が、幸せそうな空気を含んでいる。