大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「宿題してるから、ごめんっていって」
「あら?会わないの。わかった」
それから、パタパタとお母さんのスリッパの音が遠のいていく。
ふぅーーと長い息をついて、また冷静さを取り戻したのもつかの間のことで、すぐに、スリッパの音が近づいてきた。
「一瞬だけだから、会いたいって」
「っ。……宿題、してるからって言ってるよね、私」
「なに、あんた。千尋くんと喧嘩したの?」
「…そんな感じ」
それから、また、お母さんの足音は遠のいていって、再び近づいてくることはなかった。
会いたい、ってそんな気休めなのかご機嫌取りなのか分からないような言葉いらない。そんなに、私は簡単じゃないんだ。
時計の針は、八時半をしめしている。
こんな時間に。
まるで、さっきまで百瀬さんといましたって言っているみたいな時間に、置いていった幼なじみの様子をうかがいにくるなんて。
ずるすぎる。ずるいよ、千尋。