大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
『千歳くんのかわりに、虹のそばにいるよ』
そんなことを今日言わせたのは、私なのに。
センター分けの前髪も、ツーブロックの髪型も、かけだしていった背中も。
『虹ちゃん』って、難しい顔で私の名前を呼ぶあの頃の千尋じゃない。
ハートをなぞる。
虹色のきらめきは、なぞったところから消えていくみたいで苦しくて、それでもなぞった。
そうしていたら、ピコン、と携帯にメッセージが届く音がベッドの方でする。
本を閉じて、ベッドに再びもぐりこんで確認したら、メッセージは千尋からだった。
会えない理由が宿題なんて嘘だって千尋にはたぶんしっかりばれてるだろう。
だって、私が学校でぜんぶ終わらせてから帰ることを千尋は知っているんだから。
深呼吸をして、虹色ハートをなでていた人差指でそっと開く。
「……意味分かんない」
飾り気も何もない、文字だった。