大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
なんとか食べきったアイスの棒を、私の右手から千尋は奪って、ソフトクリームのゴミと一緒にレジ袋にいれる。
ありがとうって言いながら、さっき千尋の手に包まれたことで少し乱れた髪の毛を直しておいた。
それで、ちらと千尋を横目で見た時に、柔らかくはねる彼の髪の毛先を、“彼”にふと重ねてしまった。
最近会ってないけれど、顔も声も、笑うとできるえくぼも覚えてる。
別に悲劇的な別れ方をしたわけではなかった。けれど、絶対に傷つけていたことは確かだった。
今も、傷ついている、なんて自惚れかもしれないけれど、もしそうだったら、すごく辛い。
知らぬ間にうつむいてしまっていた私の頭に、ぽんっと優しく触れた体温に、ゆっくりと顔をあげると、蛍光灯の光に反射した千尋の瞳の光がが私をまっすぐにしめしていた。