大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
数学も物理基礎も正直分からないところが分からないという感じで、分からない箇所をぱっと思い出せるわけではないけれど、だからといって、ない、って言ってしまうのは惜しい気がした。
だってそしたら、そっか、で終わってしまう。
千尋が教えてくれる時間は、千尋と一緒に入れる時間と等しくて、ただでさえ百瀬さんを理由に一緒に帰れない日が増えた今では、一緒に入れる時間は大切にしないとって、そういうことを思うのは不本意なのに思ってしまう。
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どうしよう、と焦った末に、とりあえず頭に浮かんだ数学のワードを声に出す。
「三角関数?」
「ははっ、なんで疑問形なわけ」
「あと、確率とか?」
「三角関数と確率がわかんないの?」
「…うん」
「物理基礎は大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
さすがに、全部教えてもらうとなると頭がパンクしてしまうことは目に見えている。全然大丈夫ではないけれど、数学だけで十分だ。