大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「虹、大丈夫?」
「あんまり大丈夫じゃないかも。でも、結構分かってきた気がする」
「ん。今日は、ここで止めよ。キリいいし。虹のちっちゃい脳みそから悲鳴聞こえる」
千尋がシャーペンをくるりと一度まわして、教科書を閉じる。
私はもう疲れ切って、千尋の嫌味に何か言葉を返すのも億劫でやめた。
始めてから、一時間半、ぶっ続けで三角関数の基礎から千尋は教えてくれた。
前から知っていたけれど、勉強を教えてくれるときの千尋は結構スパルタだ。
考えることをサボらせてくれないし、次から次へと問題を解かされる。
結局、確率にはたどりつけなかったけれど、これから確率もやるって言われたらもう私の頭は爆発してしまったと思う。
んー、と千尋がのびをして、ぎゅっと目を閉じる。
それを横目で見ていたら、私も真似したくなって、手を上に伸ばして背中をそらせた。ぽきき、と骨が鳴る音が、千尋にも聞こえてしまったのか、ふ、と鼻で笑われたから、少しだけ睨んだ。