大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「虹、」
「……うん」
「虹がそういう顔するときに、誰のこと考えてるか知ってる」
「……そっか」
千尋が私と同じように悲しそうにする意味を私はよく分かっていないけれど、でもそれが優しさなんだってことは分かっているつもりだ。
「虹、憶えてる?」
「うん?」
「昔、虹と俺と千歳君でかくれんぼして、虹がずっと鬼でさ、拗ねて泣いたんだよおまえ」
幼い頃の普段の遊びっていったら鬼ごっこかかくれんぼくらいで。
走るのが苦手だった私はかくれんぼが大好きだった。
よく、千尋と千歳君と私の三人でかくれんぼをしていた。
でも、いろいろと不器用な性分だったんだとおもう。
かくれんぼが大好きだったくせに、見つけるのも隠れるのも下手だった。
二人ともずっと見つからなくて、急にひとりぼっちになってしまったように感じて、大泣きしたこと、今でもはっきり憶えている。
「でさ、その後に、虹のこと慰めようとして三人で近くの駄菓子屋にいって、アイス買ったんだよ。虹はずっと泣いてたから、俺と千歳君で」
「うん」
「でも、虹の好きなアイスなんてそのとき知らなくて、千歳君はソーダアイス買って、俺はチョコアイス買って、虹のとこもってたの。……憶えてる?」
「うん、憶えてる」
憶えてるけれど、私にとって、なんとなく気まずい記憶だったりする。
あのときは幼すぎたから。
人を思いやったり、何かをごまかしたりすることができなかった。