大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
頭の中で、三角関数の公式が泳いでいるみたいで、落ち着かない。
千尋は、すっきりした顔で、開いたままのノートに目線を落としていた。
ありがとう、って急に言いたくなる。
気まずさをどこかにやってくれて。
勉強を教えてくれて。
今、私の隣にいてくれて。
なんて。ありがとうって素敵な感情なはずなのに、昔は、百瀬さんがいないときは、勉強を教えてくれること以外の“ありがとう”なんて生まれなかったと思うと、どういう気持ちになればいいのか分からなくなる。
それで。
「本当に、千尋って数学得意だよね。…なんで?」
「なんでって、」
「……、」