大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「虹が苦手な教科だからだって前も言った気がするけど」
「そっか…ありがとう」
結局、伝えた“ありがとう”には、素敵な気持ちは何一つこめられなかった。
「つーか、確率はどこがわかんなかったの?今日はやんないけど、一応聞いとく」
「あ、…えっとね、」
ただでさえ頭の中では三角関数の公式が泳いでるし、咄嗟にどこって言えるようなものでもなく。
どうしよう、とあたふたする中で、ひとつ、ひらめくみたいに新しい記憶をつかまえる。
今日のお昼だ。
その記憶をなぞって、彼が言っていた言葉を一生懸命思い出して、都合が悪い部分をぼかして千尋に伝える。
「…えと、確率Aがあるとするでしょ、それでその確率は、確率Bを二乗して、ルートしたものくらいなんだけど、どういうことか分かる?」
千尋は、後ろに手をついて脱力した感じで私の説明を聞いていたものの、聞き終わるときょとんとした顔をつくった。
もしかして、千尋もわからないのかもしれない、と思ったけれど、どうやら、きょとんとした表情になったのは、それが理由ではないらしかった。