大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「そんな問題、教科書にある?」
「あっ、うーん、どうだろ。知り合いの人が言ってたことだから」
「ふーん、まあいいけど。なんだっけ、二乗してルートつけるんだよな?」
「うん、確かね」
「変な問題だな。そしたら、確率Aと確率Bはおんなじ値になるけど」
「あ、そうなんだ、…そっか」
――『朝比奈と百瀬が付き合う確率って、俺とあんたが付き合う確率を二乗してルートつけたくらいだから』
せっかく意味が分かったのに、結局水嶋くんの言葉をどう捉えればいいのかは分からないままだった。
千尋と百瀬さんが付き合う確率は、私と水嶋くんが付き合う確率と同じくらい、って。
やっぱり、あのつかめない表情の奥では何も考えていないのかもしれない。
私と水嶋くんが付き合う確率がゼロなら、千尋と百瀬さんが付き合う確率もゼロになるなんて、そんなの馬鹿みたいだ。
安心して、と言っていたけれど、これのどこが安心できるのか分からない。
なんて、水嶋くんがいたお昼のことを少し考えていたら、虹、と隣で千尋に名前を呼ばれた。
気まずさはないけれど、勉強を教えてもらったときとは少し違って、しんみりとした空気に包まれる。