大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
千尋は後ろの手で自分を支えるのをやめて、あぐらをかいたまま少し身体ごとわたしに向けた。
それから、珍しく上目がちに私の瞳をとらえて、ゆっくりとその口が開く。
「…金曜日、ごめん」
ぶり返す、というよりは、ちゃんと解決させようとする意思みたいなものを感じる。
突然の謝罪に、一瞬戸惑ったけれど、千尋がいつも意地悪をいうような憎たらしい顔もばかにするような甘い顔もせずに、じっと私を見ているから、知らない間に頷いてしまっていた。
「私もごめん。千尋は悪くないよ」
「ううん、俺が悪い。あんな風になる虹、本当に久しぶりに見た。のに、俺が置いていったから。……千歳くんもいないのに。虹があそこでずっと一人で大泣きしてたらどうしようって思った。だから、家戻る前に一回クレープ屋に行って、そしたら虹いなかった。で、一瞬安心したけど、ちゃんと家帰ったか不安になって、虹の家行った」
「……ごめん」
千尋。
私はあの場では一滴の涙も落としてない。
千尋が思っているより、こころの中は真っ黒なんだよ。
だから、そんな風に本当は言わなくてもいい。
千尋のレンズからみる私は弱くて、ただ千歳くんがいなくて、さみしいだけの女の子で、本物の私よりきっときれいだ。