大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「――百瀬さんのこと、どう思ってる?」
スカートの裾をぎゅっと握りしめて、千尋を見上げる。
正座した足がぴりぴりとしびれてきているけれど、今はその感覚があってなんとか自分を保てているような気さえしてくる。
三角関数の公式も、もう頭の底に沈んで、千尋と百瀬さんが付き合う確率、千尋の優しさ、リストカット、嘘ばかりついてそれでもなおこんなことを聞いてしまう自分への嫌悪感、それらが頭のなかでごちゃ混ぜになって溺れている。
千尋は、私と目を合わせたまま、そっと言葉を落とした。
「大丈夫になってほしい」
「……、」
「だから今度、専門家に頼れって、ちゃんと言う。俺じゃ無理だし、白状かもしれないけどクラスメイト相手に家族みたいに寄り添うとかできない。ちゃんと専門的な知識を持ってケアしてくれる人を探してほしい…それ以上の感情もそれ以下の感情もない」
ビョーキ、なんて最低なことを言った。
金曜日の言葉がもう一度私に返ってくる。
千尋の心配の気持ちを嫉妬で殴って傷つけようとした。
それなのに、あのとき、千尋は怒った顔をせずに正論で私を責めただけだった。
心配すらひとつもしていなかった私を。
それがどれほどのことなのか考えれば考えるほど、自分の最低さを隠していたメッキがはがれていく。