大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
何かあると、記憶をなぞりだす千尋。
時々、答え合わせをするかのように、昔のことを振り返って、私に憶えているかとたずねる。
私と千尋の家がみえてくる。
人気のない道路の端で、千尋の足が止まって、私の前にまわりこんできた。
「虹は、即決で千歳君のソーダアイスを選んだ」
「……だって、ソーダアイスが好きだったから」
本当は、違うのかもしれない。
逆、なのかもしれない。
あのとき。
千歳君がソーダアイスを、千尋がチョコアイスをもって私のそばにきたとき。
私は、千尋のことなんてみえていなかった。
もともとソーダアイスが好きだったのかもしれないし、千歳君がくれたから好きになったのかもしれない。
今じゃ、どっちが先かわからない。
「俺、あれから、虹はソーダアイスが好きなんだって忘れたことなかったよ」
千尋が今どんな顔をしているのか、あんまり見たくなくて、うつむいたままでいたら、千尋の陰が一歩近づいてきた。
「……大学落ち着いたら、帰ってくるって」
「ち、千歳君……?」
「うん」
「……そっか」