大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
そんな中、前までと変らないことのうちで、厄介なことと言えば、ひとつ。
【ごめん、今日帰れない。うまく百瀬に言えなくてごめん】
お昼休みに届いた千尋からのメッセージ。
少しだけ辟易している感じが文面から伝わってきて、前まではそっけなく【わかった】って返すだけだったけど、今は気を遣わなくていいよの気持ちをこめて絵文字もつけるようにしている。
そりゃ内心、うんざりする気持ちもあるけれど。
髪型がすこしうまくいった日とか、いつもより自分の顔がましに見える日とか、そういう日はがっかりする気持ちがやっぱり膨らんでしまう。
それでも、まあ、もう耐えられる。
本当に、“ただの友達”なんだって信じることができるから。
千尋が帰れないと分かったから時間を気にすることもなく教室で課題を終えて、とぼとぼ下駄箱に向かう。
今頃、千尋と百瀬さんは何してるんだろう。というか、二人はどんな風に放課後をすごしているのかな。
階段をおりながら、頭を埋め尽くす心配事はきりがない。
でも、それが嫉妬の色から少し変ったことで、憂鬱さもあまりない。
階段を降り終えて、しんとした周りをふと確認する。