大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】





「答えないから、ペナルティーね。枢木ちゃん、俺と今から、遊びに行こーよ」



指で絡め取った髪を弱い力で引っ張られる。

とくん、と鳴った心臓の音は、不可抗力。
私は彼の指から逃れるように、首を横に振った。


惑わされたくない、性格も感じも悪い彼の罠に騙されて嵌まってばかりだから。

水嶋くんがお昼に気まぐれに教室に現れて、美優にも謎の裏切りをされて断れない私は一緒にご飯に食べるということも、あれからもう何度もあって。
せめて、この放課後くらいを自分を守りたいって思うよ。




それなのに。




「うん、断るだろーなって思ったー。じゃあ、約束する。今日、嫌なことは言わない」

「…信じられないもん。いつも、馬鹿にしたみたいな話し方するし」

「それは仕方ねーよ、昔からそういう喋り方だし。人の喋り方にケチつけんのは違うよね」

「………昔からなんだ。それは、ごめん」




「今日、百瀬と朝比奈が一緒に帰ってったから。枢木ちゃん、一人なんだろーなって思って。それだったら俺といればいーじゃんって思った。からかうためだけに待ってたって思われてんなら心外だなー、俺は俺なりにあんたに興味持ってる。枢木虹さー、そういうのは否定しないでくんねーかな」



ゆるい表情が変って、真剣な瞳につかまる。

スイッチのオンオフよりはっきしたものではないけれど、ゆるさと真剣さの切り替えが、ずるい、と思う。




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