大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「それにさー。せっかく、可愛い髪型してんじゃんねー、今日」
私の髪から指を離して、目を細めてそう言った水嶋くん。
いつもよりうまく巻けて、ふわふわさせることができた髪の毛。
……千尋に見てもらいたかった、髪。
でも見せられなくて残念だった胸の内。
それを、水嶋くんは一つも知らないくせに、すくいとって、千尋の代わりみたく褒められる。
そういうのも、まるで罠。
「で、もう一回聞くね。というか、ペナルティーだから枢木ちゃんに拒否権はあんまないんだけど。俺と、遊びに行かない?」
水嶋くんが私の顔をのぞくように背をかがめる。
ここまで言われて断るなんて、私にはうまくできなくて。
ああ、千尋ももしかしたら百瀬さんにたいしてこれと似たような感情なのかもしれない、とぼんやりと頭の隅で思いながら、こくりと頷いてしまった。
「…分かった。行こう」
……やっぱり、私はなんだかんだ流されてしまう運命にあるみたいだ。