大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
街灯の明かりに照らされながら歩く夜道は、相変わらず話が上手な水嶋くんのおかげで楽しかった。
肌寒い秋の風に背中をおされる。
遠くから虫の声がする。
やっぱり不思議な感じだ。
水嶋くんとこんな風に歩いていることは。
私のことを気になってるって言っていた。
でもね、分かるよ、私。
きっと、君は私のことを好きにはならない。
あ、いいな、とか、あ、可愛いな、とか、水嶋くんの場合はそれが積もって好きになるとかじゃない気がするんだ。
ほとんど彼のことを知らないくせに、何言ってるんだって感じだけど。
そういうんじゃなくて。もっと劇的で。
嫌い、って水嶋くんみたいな、情けもなければ憎むことも面倒くさがるような人が言うその言葉は、本物の好きと紙一重な気がする。
水嶋くんにはそんな分かったようなことは言わないけれど、水嶋くんにとっても千尋と百瀬さんが一緒にいるような状況はよくないだろうな、と思う。
もしかしたら私に近づいたのも、先に千尋と百瀬さんが仲良くなったということがあったからかもしれない。