大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
住宅街をすすんで私の家が見えたタイミングで、水嶋くんの声が耳に届く。
「てかさー、枢木ちゃん、朝比奈と家近いんだよねー?」
「うん、あれだよ千尋の家。私の家がその向かいの家」
指を指して、水嶋くんにしめせば、へー本当だー、と何を考えているのかわかんない返事をされる。
それから、いきなり携帯をとりだした水嶋くんを見て、少し不思議に思っていると、私の視線を感じたんだろう。
水嶋くんが携帯から、私に視線を向けて、一度ゆるりと意地悪く口元に笑みを浮かべた後、また携帯の画面に指を滑らせていた。
「どうしたの?」
「んー、別にー。朝比奈にメッセージ送ってただけ」
「えっ、」
思わぬ水嶋くんの行動に、どくん、と脈がうつ。
よからぬことを考えていそうな彼に少しだけ目を細めて睨んだ顔をすれば、へら、とうわべだけすくったみたいな笑顔で交わされた。