大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「枢木ちゃんのことなんて話してないよー」
「…ならいいけど、」
「“もう家?”ってメッセージ送ったら、“家。今からバイト行く”って返ってきたー」
なんだ。もう千尋は百瀬さんといないんだ。
少しだけほっとしている自分がいる。それを水嶋くんは見逃してはくれなくて、見透かしたように、くすり、と笑う音が鼓膜に意地悪に響いたけれど、無視することにした。
千尋は、どうやら今日はバイトの日みたいだ。
今、私といるってことは水嶋くんはバイトがないみたいだけど。
男の子同士ってそんなくだらない会話もするんだ、って意外に思っていると、水嶋くんはもう千尋とのメッセージのやりとりをするのをやめたのか、携帯をポケットにしまった。
それからなんだか企んでいるような顔で私を見た。
少し寒気がしたのは、秋の夜風のせいだと思う、きっと。