大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
家の前について、水嶋くんと向かい合う。
私は自分の家が正面になるように立っていて、水嶋くんは私の家の玄関に背を向ける状態で。
私越しに、千尋の家を見て、水嶋くんは、ゆるりと笑う。
街灯の怪しげな光は、夕暮れの柔い光より彼に似合っていた。
何を考えているのかつかめない瞳が、曖昧な光を含んでいる。
「本当に近いねー、朝比奈の家」
「うん、でしょ」
水嶋くんの目が私と私の後ろを行ったり来たりしている。
だけど、もう散々つかめない彼を見てきたわたしとしては、そんなかれの目線の動きも別に気になるほどのことではなくて。
一歩私に近づいて、少しだけ背をかがめた水嶋くんに、暗闇の中、街灯の光を頼りにぱちりと瞳をあわせる。