大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
家の前に立って、手をポケットに突っ込んで、心の中でひとつも笑ってない、明らかにうわべだけの甘い笑顔を浮かべた千尋と、今、目が合う。
すぐにうごきだす思考回路。
いや、逆に正常にはうごかなくなってしまったかもしれない。
朝起きるのが苦手なはずだ。
中学校にあがってからは、一度も一緒に学校にいったことはないし、私の方が絶対に千尋よりも家を出るのは早い。
何も言葉を発することもなく、動作を一時停止していた私に、痺れをきらしたのか千尋は口を開いた。
「虹、おはよ。これくらいの時間に学校行くんだ。偶然。俺も今日、なんか早く起きたから」
……偶然?
偶然って、こういうときに使う言葉ではない気がするけど。
どう考えても、私の家の前に立っている時点で、私を待っていたとしか考えられず。