大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】




でも、それよりも。


用意していました、と言わんばかりの違和感だらけの棒読みのセリフと、それとは不釣り合いな甘い笑顔に、違和感をこえて、嫌な予感さえ感じてきてしまう。

それを振り切るように、扉を後ろ手で閉めて足を踏み出す。
それから、表情を一秒たりともくずさない彼の元に行く。




「…おはよう」




戸惑いながらも、上目で千尋を見ながら挨拶を返せば、うん、と彼は軽く頷いて、歩き出した。

きっとこれは、一緒に学校にいくってことなんだろう。私も千尋の隣に並んで歩き出す。




小学校を卒業してからは一緒に学校に行くのははじめてだから新鮮でうれしい気持ちになるはずなのに、あまりにも作り物の笑顔をはりつけて、まるで本心の見えない隣の千尋に私はどういう感情を抱けばいいのか分からない。

第一、朝が弱い千尋が朝からにこにこしていることが変だし、連絡もせずに、いきなり家の前で待っていたこともよく考えたらおかしくて。





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