大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「――水嶋と付き合ってんの?」
言い終わった瞬間、甘い顔が少しゆがんで、だけど、すぐに千尋はさっきまでの表情に戻した。
予期していなかった質問に、私は一瞬返事をすることを忘れてかたまってしまったけれど、千尋の質問する内容はどう考えてもありえないことで、大袈裟に首を横に振り、すぐに否定する。
そんな私を千尋はじっと見て、そーなんだ、と甘い笑顔とは似合わない無機質な声音で返事をよこした。
それから、ふいに私から目線をそらして、千尋は前に顔を向ける。
だから私も千尋から視線をはずして前を向こうと思った。
だけど、そう思った次の瞬間に千尋の繕った笑顔がゆがんで、彼が眉をよせたから、目をそらすことができなくて。
「……水嶋はだめって俺が言ったの忘れた?」
「…覚えてる、けど」
「へー覚えてるんだ。馬鹿だから、忘れてんのかと思った」
「なっ、」
「でも、すぐ忘れそうだし、もう一回言うわ」