大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「だから、けっこうずっと我慢してた。百瀬のことで虹が不安定だったのもあったし。けど、昨日、バイト行こうと思ったら家の前にお前と水嶋がいて、もう我慢の限界だった」
「……なにそれ」
「あのさ、応援できる恋と、応援できない恋、ある。虹が好きになった人ならだれでもいい、とかそいうの俺は思えない。水嶋は、よくない」
「…なに、それ」
朝よりも穏やかな千尋のトーン。
だから、期待しておとされる胸の内も、最低限の振り幅でおさまっている。
そのことに、自分のことながら、ほっとしている。
クレープを食べながら、さりげない相づちばかりをうっておく。
じゃあ、千尋。
千尋は、自分ならいいって思う?
なんて、そういうことを今、切迫した雰囲気でもないパラソルの下で聞くことはできず。
餌付けなんてばかみたいなことを言って、千尋によって豪華なトッピングがされたクレープを頬張ることしかできない。