大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】




狡い。



何がって、それは、幼なじみっていうには相応しくないくらい私のことを心配して優しさを向けてくるのに、その中に一ミリも恋愛感情の気配を含ませないことが、だ。



好きだから、心配してるわけじゃない。

可哀想だから心配するのほうが適切な感じ。




百瀬さんには可哀想なんて偉そうなことを思ってないって言っていた千尋だけど、たぶん私には思ってる。

だから、偉そうに千歳くん以外とのありもしない人の恋愛に口を出して、それを自分が言ってもかまわないって、当然なんだって、平気で思ってそうな顔をする。




「あと、千歳くんのことだけど、」

「なに、」

「たぶん結局さ、一周回って虹に戻るんじゃないかなって思ってるから、待ってればいいって言ったのも本気だよ、」

「…戻らないよ、」




千歳くんは、もう前に進んでいる。

そんな円みたいに戻るものじゃない、私と千歳くんの恋は。




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