大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
それで、ふと、千歳くんの後ろに隠れるようにたっている男の子に目がいった。
千歳くんよりも低くて、私と同じくらいの身長の男の子。
じっと、怖い顔で私のことを見ていたものだから、ドキリ、と不安になった。
まるで千歳くんを盾にしてるみたいな、彼はそんな感じだったと思う。
「ほら、千歳に隠れてないで、あんたも挨拶しなさい」
お母さんにそう言われて、千歳くんの後ろで、顔だけこっそり覗かせるようにして、ぎゅうっと唇をかんでいたその顔がちょっとだけほわんと赤く染る。
それから、ゆっくりと口を開いた。
「.......あさひな、ちひろ」
それっきり口をつぐんで、また千歳くんの後ろに隠れてしまう。
「ごめんね、虹ちゃん、千尋は緊張してるだけだから」
千歳くんは苦笑いして、後ろを振り返った。
「千尋、虹ちゃんと仲良くしような」
その言葉に千尋は何を返したのかは分からなかったけれど、「いま、頷いたよ」と千歳くんがまた王子様みたいに笑ってそう教えてくれたから、私も笑うことができた。