大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「………千歳くん以外の人を、私が好きって言ったらどうするの?」
千尋のアイスティーを、さっきクリームをすくいとられた仕返しみたいに飲む。
甘さの間にはさんだ甘くない飲み物は、なぜか喉にしみていく。
だけど、ひりひりと痛いのは、のどじゃなくて心だって気づく。
千尋がさっき挙げた男の子の名前は、どれも遊んでることで有名な人たちなんだろう。
噂に疎い私でも女遊びの激しさを知っている人が千尋が挙げた中にいた。
崎くんも、この前二股が本命の方にばれた、なんて教室で嘆いていて、この人は最低だ、って私も思った。
だけど、私がそれ以外の人と仮に恋に落ちた場合、千尋はどうするつもりなんだろう。
まあそんなことは当分の間はありえないことで、私は目の前にいる千尋が好きなんだけど、なんて口の中で溶かした言葉は、冗談じゃないから笑えない。
クレープの甘さが余計に私の恋の酸っぱさを引き立てる。
前もそういうことを思った気がするよ。
千尋が怒っていても笑っていても優しい顔をしていても、千尋といると、酸っぱい気持ちばっかりだ。
酸っぱさの中に、ぽつぽつと甘さが降ってきて、傘でふせぐこともできない。
たとえ傘をもっていたとしても、私は降ってくるものをうけいれてしまうんだろう。
降ってはすぐにむなしく消えるものにそうやって満たされてしまうのも、滑稽だ。