大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
笑いながら泣きたくなるようなむなしい気持ちのなか、千尋の返事を待っていたら、千尋は少なくなったアイスティーをずず、と飲んで、私を上目に見た。
「そんなん、絶対、俺が品定めするよ」
「は、」
「ずっと、そばにいたんだから、そいつが虹を傷つけるようなやつかどうかは判断できる」
ずっとそばにいる千尋に私は、結構傷つけられているんだよ。
なんてことは、千尋が悪くないことで、千尋のことが好きなばかりに私が勝手に傷ついているだけだから、言わないでおく。
言ったら、きっと千尋も傷つけてしまうって分かっているから。
ようやく半分まで食べ終えたクレープ。
トッピングやら何やら千尋が欲張りな注文をしたせいで、下の部分に甘ったるいチョコレートソースがたまっている。
餌付け、なんてそんなことずっと言っていたら、いつか収拾がつかなくなる。
ふと、千尋が残り一口のアイスティーを私に差し出してきた。
千歳くんとは違う、そういう甘やかし方をする。
何が違うって、千尋は甘やかしてるって思いながらこういうことをやっていないんだ。
優しさがいろんなかたちに姿をかえる。
だけど、恋にだけは変わらないみたい。本当にね、なんでなのかな。
顔をすこし千尋のほうに近づけて、差し出されたアイスティーのストローに口にふくむ。傍から見たら飲ませてもらっているような図だ。
むなしさと一緒に、残りのアイスティーを飲み干す。
そうしたら、千尋はふ、と息をぬくみたいに柔らかく笑った。