大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
それに比べて千尋は、初めて会った時よりかは話してくれるようになったけれど、やっぱりいつだって子供のくせに難しい顔をしていて、あんまり感じのいい男の子じゃなかった。
いつからか、千歳くんは私のことを「虹」と呼び捨てで呼ぶようになって、私は、千尋のことを「千尋」と呼ぶようになったけれど、千尋だけはずっと私のことを「虹ちゃん」って呼んでいた。
千歳くんは、いつだって私に優しくて、どんなときも助けてくれたから、出会って一緒にいるうちに、どんどん好きになっていったけれど。
「虹、ごめんね。俺、中学生になったら、もう虹たちと学校行けないや」
「やだ、千歳くんがいないの寂しいよ。でも、虹、ちゃんと我慢するね」
「千尋と仲良くしてよ、ちゃんと」
「.......うん」
千尋のことは、正直なところ、そんなに好きじゃなかった。
三人でいると千歳くんより喋らなくてつまらないし、いつもむすっとしてるし。
それなのに、千歳くんがいないときだけ、少しおしゃべりになって、「虹ちゃん」って呼んでくる。
そういうところが、なんだか、苦手だった。