大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「なんで、千歳くんはそういうことばっかすんの」
「そういうことって何。別に、悪いことはしてないつもりだけど」
「無自覚なの気色悪いから、もー今すぐその人連れて自分のアパート帰ってくんないかな」
期待の振り幅。
振り子のようだ。あげられてあげられて。
―――そうしたら、後はどうなるの?
街灯の頼りない光が、私たちを照らしている。
千歳くんの後ろにいた人が、ぎゅっと千歳くんの服の袖をつかんだ。
そうしたら千歳くんは、一度大きく溜息をついて、千尋から私に視線をすべらせる。
「千尋はもういい。虹、」
優しくてまるい声で名前を呼ばれて首をかしげれば、千歳くんは今まで自分の後ろにいた人をそっと引き寄せた。
私も一歩前に出る。
「ーー俺の彼女だよ」
千歳くんの隣に並んだその人が、ぎゅっと唇を結んだまま、私に向かってぺこりと頭をさげた。
きれいな女の人。
少しつり目で、肌が白くて、私とは似ても似つかないけれど、それでも千歳くんが二度目の恋をしている人。
生まれたのは祝福の気持ち。
ただ、それだけなのに。