大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「……絶対に会わせたくなかったんだよ」
「………」
「だから、誘った。動物園なんて、別に行きたくなかった。虹の言うとおりだよ。でも、用事を作らなかったら、千歳くんたちは絶対虹のとこに行くって分かってたから。そんなことになったら、虹はどうなるんだって考えたら、もう無理だった」
――動物園なんて行きたくなかった。
そうだと思った。分かってた。
だけど、楽しんでいたよ、千尋。
なのに、もうそんなことは全てどこかに捨てやって、今はただ悲痛な顔をしている。
私だって、楽しかったのに。
誘ってくれて、嬉しかったのに。
土曜日に出かけるなんて初めてで、ただ、それだけが嬉しかったのに。
千尋が、私に身体を預けるようによりかかってくる。
ここに俺はいる、と言われているみたいだったけど、それも、もう。何もかも、受け取りたくはないのに、私はよりかかられたまま、光の届かない足下をぼーっと見つめる。
「……手だって、千歳くんと俺を重ねてるのかなって、だから繋いだ。まだ、十分すぎるほど、虹は千歳くんが好きなんだって思った。だから、本当に余計に会わせたくなくなった。ごめん、もうちょっと遅くまでどっかに連れて行ってやれればよかった。でも、もしかしたら、千歳くんは虹に嫉妬してほしいだけかもしれないから」
「……」
「――虹、お願いだから、泣かないで」