大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】






泣きたい。

泣きたくて、仕方ない。千尋、千歳くんのせいで、じゃない。



苦しい千尋の声。

鼓膜を震わせる。震わせるたびに涙腺のすれすれを刺激して、だけど確実には触れないから、泣きたくても泣けなくて。棘だけが刺さっていく。




優しい。

分かってる。分かってた。



優しくて、優しくて、優しくて。

それだけしか、持ち合わせていないから。




むなしい。
空っぽになっていく感覚は深くなっていくのに、どうして続くのだろう。


虚しさには、なんで限界がないんだろう。

虚しさと恋心はまったく比例せず、こんなときでも、好きだ、という感情が溢れてくる。それさえも苦しくて、ぎゅうっと唇をかむ。




千尋を千歳くんと重ねた事なんて一度もない。



これもぜんぶ、今までの臆病でずるい私が生んだことだとしても、ここまで言われるなんてあんまりだ。





< 379 / 433 >

この作品をシェア

pagetop