大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
泣きたい。
泣きたくて、仕方ない。千尋、千歳くんのせいで、じゃない。
苦しい千尋の声。
鼓膜を震わせる。震わせるたびに涙腺のすれすれを刺激して、だけど確実には触れないから、泣きたくても泣けなくて。棘だけが刺さっていく。
優しい。
分かってる。分かってた。
優しくて、優しくて、優しくて。
それだけしか、持ち合わせていないから。
むなしい。
空っぽになっていく感覚は深くなっていくのに、どうして続くのだろう。
虚しさには、なんで限界がないんだろう。
虚しさと恋心はまったく比例せず、こんなときでも、好きだ、という感情が溢れてくる。それさえも苦しくて、ぎゅうっと唇をかむ。
千尋を千歳くんと重ねた事なんて一度もない。
これもぜんぶ、今までの臆病でずるい私が生んだことだとしても、ここまで言われるなんてあんまりだ。