大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
千尋は千歳くんのことを聞くと機嫌が悪くなりがちだったけれど、小学生の頃の私はそれを気にするよりもまず、千歳くんのことがたくさん知りたくて仕方なくて、千尋が何を思ってるかなんてどうだってよかった。
「中学生になったからさ、千歳くん、彼女とかできちゃうのかなー」
「どうだろ、でもラブレターとかはたくさんもらうって言ってたよ」
「え!どうしよう! 虹も千歳くんにお手紙書こうかなあ」
「.......虹ちゃんは、やめておいたほうがいいんじゃないかな」
「えーなんで!じゃあ、わかった!千尋にも書くよ、それだったら、変じゃないかな?」
「.......俺にも書いてくれるなら、変じゃない、かも」
千歳くんと千尋とわたしの三人じゃなくて、千尋と二人だったからこそ、千尋について、分かったこともあって。
千歳くんの話をするとたいてい嫌そうな顔をつくる千尋は、私が千尋のことを聞いたり千尋の話をすると、どこか嬉しそうにするんだ。
だから千尋の機嫌が悪くなったら、わざと千尋のことを話したりして、千尋の機嫌をなおそうとしたこともある。小学生ながらに私は結構ずるい女の子だったと思う。