大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「私が可哀想だった?だから、そばにいる?もういいよ、それならいなくていい。もう解放してあげる。今まで言ってきたことも全部うそだから。千歳くんのことなんて好きじゃない、なんでそんなことも分かんないの」
「……虹、」
「今日だって、私、頼んだ?頼んでないよね。ばかみたい。泣かないでってなに。泣きたいよ、千尋のせいなんだよ。私のこと何でも知ってるような顔ばっかりしないで。知らないよね?知らないんだよ、千尋は。そういうの、本当に鬱陶しい。もうずっと、同情も優しさも私はいらなかったんだよ」
ベンチから立ち上がる。
目眩がする。
夜が連れてくるのは、悲しいものばかりだ。
理性なんて、もうない。
好き、と、憎い、が下手くそに喧嘩して、勝敗なんてわかりきってるけれど、今だけはその結果に目を背けたかった。
見ないでいたい。
どうせ前者が勝つんだって、今千尋の前では気づきたくない。
座ったままの千尋に、背を向ける。
はじめて、私から背中をみせた。
それで、分かったんだ。
寂しいのは、胸が痛いのは、背中を見せられた方じゃなくて、向けた方なのかもしれないって。
だけど、そんなことを悟ったときにはもう遅かった。