大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】






正直、学祭の準備時期がこの時期で助かった。



私たちのクラス企画の、パンケーキ屋さん。

看板作りもエプロン作りもかなり大変で、その作業に追われている時間は千尋のことを考えないですむから。




今まで話したこともなかったクラスメイトの女の子とも一緒に準備をする中で話すようになり仲良くなれたし、放課後に遅くまで残って作業をする毎日が続いて、気を紛らわせることができている。



それでも、やっぱり、油断すると千尋のことを考えて苦しくなってしまう。



夜眠る前や、ひとりで下駄箱で靴を履き替えるとき。
千尋の存在を思い出して、泣けないくせに泣きたいような気持ちになる。

学祭当日だって、千尋がつくる綿菓子をからかいついでにもらいに行くことなんて到底できないんだって思うと、胸がきゅう、と痛み出す。





あれから結局、千尋とは2週間ほど会ってない。



学校で見かけることもなければ、家の近くで遭遇することもなかった

こんなにずっと会っていないのははじめてで、連絡をとってさえいないから、千尋が今どうしているのか全く分からない。



寂しさは、ある。


でも、会ったらどんな気持ちになるのかわからないし、あの夜のことをまだ鮮明に覚えているから、会いたいと会いたくない、が混ざりあって、自分の気持ちなのに、結局私は千尋に会いたいのか会いたくないのか、はっきりしない。



距離をおくことは、本当は何の解決にもならないような気がするのに。物理的な距離やこころの距離を離したところで、結局人はぶつからないと正解を見つけられないと思う。


背中を何も答えない。


たぶん、向き合わないとだめだ。

だけど、その機会がないから、途方に暮れている。






< 389 / 433 >

この作品をシェア

pagetop