大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】





今では少し古くなった夏終わりの記憶。


水嶋くんと放課後に出かけた日のことだ。

彼の巧みな誘導尋問やら何やらの罠にひっかかり、ファミレスで千尋に関わることをほとんどすべて話してしまったとき。

どうすれば思いが伝わるのか弱音を吐いた私に、水嶋くんが緩い口調で言っていたことを思い出す。

告白大会みたいなものにでれば、さすがに千尋も信じるんじゃないかって、そういうことを確か言っていた。




なんとも適当な提案だったし、あのときは絶対に出ないって思ったから、その提案をひとつの候補にもいれていなかったけれど。





あの日から時間がたって、そのあいだに色々なことがあった。
それで、今、私には、このポスターがひとつの希望のようにみえてきて。



だって、ゴールはたぶん、告白にオッケーをもらえるか振られるかという二択ではない。
私が千尋に恋をしているということを分かってもらう、ということだけだ。




こんなものに出るやつは頭がおかしいって水嶋くんが言っていたことも思い出す。



確かに、あたまがおかしいと思ってたし、今も思う。

大勢の前で、たった一人のための大切な気持ちをさらすんだ。

頭がおかしい人しかやらないこと。



でも、もう、ここまできたらなんでもよかった。
あたまがおかしくても、みじめでも、ばかでも、なんでも。

受け取ってもらえるなら、何でもいいって思った。






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