大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
ちょうど、綿菓子のコーナーと向かいにあるところ。
嫌でも、千尋の姿が目に入ってしまう位置だ。
むらがる女の子たちの隙間から、柔らかそうな髪がゆれるのが見えた。
それから、会いたいのか会いたくないのか分からなくて、今日は会いたくないはずだった人の姿が瞳に映って、その途端、胸がぎゅうっと縮むように苦しくなる。
会いたくなかったけど、会いたかった、のかもしれない。
あの日、背中を向けてから一度も見ていなかった顔を見て、さっきまで踏ん張れていたはずなのに、急に座ってしまいたくなる。
浴衣姿の、千尋。
群がる女の子に、綿菓子を笑顔で渡しているけれど、顔は完全に疲れてきっていて、そういうところも相変わらず。
千尋は、私に気づいていない。
今、目が合ったらどんな顔をするんだろうか。
一度千尋から目をそらしてその周りをうかがえば、今まで気づかなかったけれど、千尋の隣には、百瀬さんがいた。
そのことに、未だにじくじくと胸は痛むけれど、今の私は嫉妬する気持ちよりも不安な気持ちのほうが勝っていた。
綺麗に髪をまとめあげて、華奢なからだを浴衣につつんで、綺麗に微笑む彼女は、千尋の隣に並ぶとやっぱりお似合いで絵になる。