大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
その日の夜。
いつもより時間かけて髪の毛をドライヤーで乾かして、ベッドに寝転がる。
明日が、刻一刻と迫ってきているけれど、自分の部屋の天井を見上げれば、なぜか穏やかな気持ちになれた。
本から抜き出した虹色ハートを部屋のライトにかざす。
角度を変えれば違うように輝く。
虹色は、そういう色だ。
あの日、これをくれた千尋。
これをくれたのは自分じゃない、と嘘をついた千尋。
ぜんぶ、千尋だ。
どの瞬間も、千尋。
私は、ずっと、泣きたいような心地の中にいる。
人差し指で虹色のハートの輪郭をなぞって、もう一度、明日のステージの上で千尋に伝えたいことを頭に浮かべた。
それから、ベッドからおりて、ハンガーにかけてある制服の胸ポケットにそっとハートの形の虹色の折り紙を差し込む。
お守りにしようと思った。
あの日の千尋の優しさだけは、いらなかった、って今まで一度も思ったことがないから。
明日、きっとステージの上で足が震えてしまう私のことを、守ってくれるんじゃないかって、そんな気がしたんだ。