大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「………っ、」
ぎゅっと、強い力で引き寄せられて、気がついたら、千尋の胸の中にいた。
あのときと同じだ。
でも、ひとつ違うのは、あのときよりも力は加減されている。
抱きしめる力を知らなかった千尋じゃない。
ぎゅうっとからだを包まれる。
千尋は、この期に及んで、まだ、慰めるなんてばかみたいなことをしようとしているのだろうか。
それだったら、いらない。いらないよ。
いらないんだよ。
本当にいらないって思ってるのに、涙はとまらないし、嗚咽ももれるし、千尋のことを引き剥がすことはできなくて、なぜか顔を胸に押しつけていた。
なんで、泣いているのか分かってほしい。
千歳くん、なんて理由がもう使えない今、なんで私が泣いてるのか分からないなら、今すぐ、お前の気持ちは受け取れない、っていってほしい。
「……うぅぅ」
情けない声が千尋の胸の中でこもる。
そうしたら、ごめん、と千尋の掠れた声が頭上におとされた。