大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「水嶋だから、とかじゃなかった」
「………っ、」
「ふつうに無理だ。誰でも、無理」
ぎゅっと、私を抱きしめる腕に力をいれて、
そして耳元に唇がおりてきた。
「千歳くん以外に、虹をとられるのは絶対にいやだ」
切なくて、苦しくて、泣き出しそうな響きだった。
そのまま千尋は、私の肩に自分の顔をのせて、はー、と長い溜息をつく。私は涙なんてとまらなくて、くそやろう、ってそう言いたいのに言えなくて、だから、訳も分からず、千尋の背中に手を回してしまって。
「嘘つきじゃん、虹」
「………」
「優しいやつがタイプって言ってたのに、優しさなんていらないって何」
「……」
「黒髪で、虹より背が高いよ。顔は分かんないけど普通よりはいいと思う」
「……」
「人見知りがいいなら、もともと俺は人見知りだし、人見知りに戻れるよ。あと、目立つのは嫌いだし、興味のないやつの告白はいつも傷つけてこれ以上好きになんないでって思いながら振ってる。虹のことなら何でも覚えてるし、忘れたふりだってできるよ」
「………」
「ねえ、」