大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「なんで、俺でもいいって思えるようなこと、お前は言ってくんの」
どういう意味。
なんで、って聞きたいのはこっちだよ。
髪を、ゆっくりとなでられる。
やっていることと、その声は、どう考えても不釣り合いで、だからこそ、今、千尋がどんな顔をしているのか気になったけれど、千尋に自分の泣き顔は絶対見られたくなくて、ぎゅっと千尋の胸に顔を押しつけたままでいる。
うんともすんとも言わない私に、千尋は、さらに言葉を続けた。
「今日だって、何。俺へのあてつけ?」
なんで、そこまで言われないといけないんだ。
さすがにその言葉はこの状況においても聞き捨てならなくて、泣き顔を見られたくないなんて変なプライドもどこかにいって、勢いよく顔をあげる。
「違うっ」
なんで、分かんないの。
そうだよ、全部、千尋はできることだよ。
俺でもいいって思えるようなこと、ってそんなのあたりまえだ。
まんま千尋なんだから。タイプなんて千尋のことをまるごと言ったんだ。
くそやろうで、ろくでなしで、大好きな千尋のことを言ったんだ。
あのときだって精一杯だし、さっきだって精一杯だし、今だって、ずっと私は,精一杯千尋の前にいる。