大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「たとえ千尋でも、私の恋を否定するのはもう許さない」
真っ直ぐに言葉を落とす。
ありがとう、と、ごめんね、はやっぱり言わなかった。
そんなのはもう言えなくてもいいやって思った。
ちゃんと、届いただろうか。
不透明に響かなかっただろうか。
そんな不安を抱えながら、じっと千尋のことをみたままでいたら、千尋の口は、嘘、と言いかけて、中途半端にとじた。
それから、何度か瞬きをしたあと、本当?と掠れたような声で聞いてきたから、ゆっくりと頷く。
そうしたら、千尋は私の髪をなでていた手で自分の頬をつねって、それから痛そうに一瞬顔をしかめたかとおもったら、「夢じゃないんだけど」なんて馬鹿みたいなことを言って、ようやく小さく笑った。
それで、ちょっと、分かったんだ。
鈍くはないから、分かってしまったんだよ、千尋。
「………千尋は、私のこと好き?」
千尋の背中に手をまわしたまま、尋ねたら、ぎこちなく躊躇いながら、ゆっくりと千尋の首は縦に動いた。
それから、顔を隠すように、またぎゅっと抱きしめられて、私は千尋の胸の暗闇に戻される。
千尋は、私の肩にあごをのせて、そのまま唇を耳元によせた。