大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「……虹が幸せになれるならなんでもいいって思ってた。それは今も思ってる」
「………」
「でも、俺が幸せにしていいなら、もう譲らない」
「うん、·····でも本当に百瀬さんとは何もないの?」
「あるはずない。もう今更だし、虹だから言うけど、百瀬ね、水嶋のことが好きなんだよ。あの二人昔付き合ってて、それで、百瀬はまだ好きなまんまなの。だから、水嶋が虹にかまうのが嫌だって言ってた」
「.......そ、なんだ」
だからか。衝撃の事実だけど、ただ単に千尋にすがっていたわけではなく、私への仕返しみたいな気持ちが含まれていたのかもしれないと思うと、色々と腑に落ちる部分がある。
やっぱり、百瀬さんは怖い女の子だ。だけど、私が千尋に恋をしているのと同じように、百瀬さんも水嶋くんに恋をしていただけなのかもしれない。
水嶋くんと百瀬さんが付き合ってたことを自分も知ってることは言わないでおくことにする。
今は、もう。
そういうのはいいって思った。
「これからは、百瀬のことは水嶋に頼む。水嶋はすごいしぶるだろうけど。もう昼も一緒に食べない。虹が嫌なら喋るのもやめる」
「.......そこまではいいよ」
「うん。でももう本当に必要以上には関わんないから」
千尋の言葉に胸の中でゆっくりと頷く。
水嶋くん、恋はたぶん、もう、水嶋くん次第だ。なんて思いながらも、もうこれ以上は思考を及ばすことはしたくなくて、ふたりのことを頭の外側に追いやった。
今はただ、私を抱きしめる千尋のことだけを感じたい。
千尋は、私を包む腕にさらに力をいれて、虹、と穏やかな声を耳元に落とした。