大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
千尋は、その間も、ずっと私たちに背中をむけていた。
私が泣いてることなんてひとつも興味ない、鬱陶しい、って背中に表情なんてないけれど、千尋が着ていたセーターの皺が背中のところでそういう顔を作ってるとさえ思えてきて。
千尋なんて嫌い、ってさっきよりも鋭い気持ちを泣きながら心の中で千尋にぶつけていた。
「じゃあ、わかった。虹、俺が虹のお母さんと話してくる」
しばらく私をなぐさめてくれていた千歳くんは、私の顔をのぞきこむみたいにして、いつもの大好きな笑顔で、大丈夫だよ、と言った。
頷くこともできないでいたら、千歳くんは立ち上がって、そのままリビングを出ていってしまった。