大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
番外編:恋人たちの夏
三年ぶりに浴衣を着た。
ヘアアレンジも自分なりに頑張ってみた。
雑誌をさりげなく見せて聞いてみたとき、「分かんないけど、これが好きかも」と千尋が苦笑いしながら指さしていた髪型にした。
約束の時間の一分前。
少しだけ、ドキドキしている。
そのドキドキが、うれしかった。
玄関の扉を開くと、すでに千尋は電柱によりかかって私を待っていた。
センター分けにした髪をワックスか何かであげている。
甚平を着こなす姿は、少し千歳くんと似ていて、さすが、兄弟だと思ったけれど、拗ねられるから千尋には言わないでおく。
「……お待たせ」
向き合うようにして立つ。
緊張して上目で見上げれば、千尋は穏やかに笑っていた。
「うん。虹、やっぱ、好きだった」
「なにが?」
「その髪型」
「……それだけ?」
「はは、なわけないじゃん。行こ」
そこまで言うのなら、可愛いって言ってくれてもいいのに。それは、欲張りなのだろうか。
少し複雑な気持ちになっていたら、手を繋がれる。そのまま、指が絡んで引っ張られるように歩き出した。
……何はともあれ、今日は、夏祭りだ。